プロジェクトの立ち上げ

プロジェクト憲章とは? – 新規プロジェクトの基本方針と目的を明確にして承認を得る

概要

新しくプロジェクトを立ち上げるときに作成する文書に「プロジェクト憲章」があります。
あまり馴染みのない単語かもしれませんが、システム開発の企画書と言えばイメージしやすいかもしれません。
システム開発案件を受注する立場であれば、作成するのは大規模プロジェクトくらいかもしれません。

ただプロジェクト憲章を作成しなくても、ここで検討する情報はプロジェクトで必要になるものなので、目的と活用方法を理解しましょう。

プロジェクト憲章とは

プロジェクト憲章は、プロジェクトの特性や実現可能性について記述し、投資するに値するのか検証するために使用します。
そして経営者など上層部の承認を得ることでプロジェクトが認められます。

このプロジェクト憲章はプロジェクトマネージャ、またはプロジェクトオーナーが中心となって作成します。
そうすることで、プロジェクトの主要メンバがプロジェクトの背景や目的を理解していきます。
プロジェクト憲章が承認されたらプロジェクトが開始されます。

プロジェクト憲章の記述項目は次のとおりです。

プロジェクト憲章の記述項目
  • プロジェクトの目的
  • プロジェクトの成功基準
  • プロジェクトへの要求事項
  • 主要成果物
  • プロジェクトの全体リスク
  • 要約マイルストーン・スケジュール
  • 財源
  • 主要ステークホルダー・リスト
  • プロジェクト終了基準
  • プロジェクトマネージャ、その責任と権限レベル
  • プロジェクト憲章の承認者

ここで理解してほしいことがあります。
プロジェクトの目標と成功基準とありますが、これは単純に「品質、コスト、スケジュールを満たすこと」とは違います。

プロジェクトとは、ビジネスにおける課題を解消するために予算を立てて遂行するものです。
事業の売り上げ向上や経費削減、新事業を立ち上げるためなど理由は様々ですが、それらの要求を実現するためにプロジェクトは開始されます。

システムを構築するのは、目的を実現するための手段です。

ここで言う成功基準とは、目的を実現したのか判断するための基準です。
例えば事業の売り上げ向上であれば「売上が150%になること」のように、具体的に成否を判断するための定量値を設定します。
言い換えると、この目的が達成されなければプロジェクトを完遂しても「失敗」「追加の対策が必要」となります。

あなたがシステム開発を請け負う立場の場合も、目的を意識してプロジェクト推進する必要があります。
システムテストなどで大量の仕様変更が発生する可能性もありますが、なにより顧客との信頼を構築するには同じ目的を目指すことが大切です。
発注者の視点から考えると、その理由はわかると思います。

プロジェクト憲章のインプット情報

プロジェクト憲章を作成するためのインプット情報の参考情報を記載します。
ここに記すのが全てではなく、プロジェクトによって開始判断する情報が異なる場合があります。
承認者が納得するために必要な情報を記載すると考えてください。

1.ビジネスのニーズ

  • プロジェクトの必要性
  • ステークホルダーの影響範囲
  • スコープの特定

2.状況分析

  • プロジェクトの戦略、目的、目標
  • プロジェクトに必要な能力と組織の既存能力
  • 既知のリスク
  • 重要成功要因
  • 様々な評価の判断基準

3.条件

  • 制約条件
  • 前提条件
  • 依存関係
  • 成功基準

4.評価

  • プロジェクトの成功/失敗の測定方法
  • 評価尺度

5.合意書

  • 契約書など
  • ※口頭や電子メールの合意も含む

6.組織の環境要因

  • 組織の文化や市場の状況
  • ステークホルダーの期待値

7.組織のプロセス資産

  • 組織標準の方針やプロセス
  • 過去プロジェクトの教訓、ドキュメント
    ※類似プロジェクトを参考にするため

プロジェクト憲章の作成

インプット情報が整っていれば、それらを整理するだけでプロジェクト憲章の大部分は作成できますが、最初から必要な情報が全て揃っていることは稀なので不足している情報の収集、整理を行います。
そのうえでプロジェクトの方向性を検討しつつ、プロジェクトの財源確保など調整も行います。
これらの検討や調整を進めるには関係者へのヒアリング、または有機者に質問や相談をします。

プロジェクト評価

プロジェクト憲章で定義する評価基準でプロジェクト継続の是非を判断します。
評価の結果、プロジェクトの目的に到達できないと判断される場合はプロジェクトの見直しを行います。
外的要因により市場価値がなくなると判断されるなど、目的達成が無理と判断される場合はプロジェクト中止も検討されます。

評価のタイミング
  • ・プロジェクト開始時点
  • ・工程終了時点(フェーズゲート)
  • ・プロジェクトの外部環境が変化した時点
  • ・プロジェクト終結時点

プロジェクト憲章については以上となります。
プロジェクト管理の全体については「プロジェクト管理の全体解説」を参考にしてください。