プロジェクトの監視・コントロール

進捗管理の目的と実施方法 – 進捗状況を正しく把握する3つのポイント

はじめに

プロジェクトの進行具合を把握するために進捗管理を行いますが、現状のスケジュールが予定通り進んでいるか確認するだけでなく、今後の見通しに問題がないか把握することが大切です。
プロジェクトに参加していると進捗管理している姿を見る機会が多いため、それらの経験をもとに何となく予定と実績を確認しているだけのケースが多いです。

ここでは進捗管理を行う目的を再確認し、メンバから正しく状況を収集するためのポイントについて解説します。
また収集した情報を上長やクライアントに報告する内容についても触れます。

進捗管理表のフォーマットを公開しているのでご活用ください。

進捗管理の目的

スケジュールの予実確認と遅延対策

スケジュールの予定と実績を比較してプロジェクトの進み具合を把握します。
確認方法はWBSやガントチャートを利用して予定と実績の比較を行うのが一般的です。
Excelで予実管理をする方法もありますが、タスクの入れ替えや日付を修正したときに後続タスクの設定も合わせて修正する必要があります。
これを全て手作業で行うのは非常に効率が悪いため、進捗管理ツールを活用することが望ましいです。
ツールは有償、無償ともに様々な種類があり、プロジェクト特性や入力のしやすさで選択してよいですが、以下の点は考慮した方が良いでしょう。

  • 進捗報告資料として利用できるフォーマットなのか
    または印刷できるか
  • 複数メンバが同時に編集できるか
  • 入力データをCSVなどで出力できるか
    進捗データを活用したプロジェクト分析で使用できる


予実を確認した結果、スケジュール遅延が発生している場合、遅延の原因を確認したうえで対策を検討します。
ちなみに原因を分析するとき、担当者を責めることはNGです。
それを行うと、正しい報告が上がってこなくなります。

遅延対策を検討したら必要あればスケジュールを修正するのですが、安易にスケジュールを遅らせる行為は危険です。
今後の予定を見てプロジェクトの全体進捗に影響がないこと、また同様の遅延が発生する可能性がないか確認します。
さらにメンバのスケジュール遅延に対する問題意識が低下する可能性があります。
「スケジュールを見直してくれるから、遅れてもいいか」と考えられると困ります。
メンバにも遅延を回避する方法を考えたり、努力する習慣をつけてもらう必要があるので、しっかりと原因対策を検討してからスケジュール見直しを行いましょう。

生産性を上げる

進捗に遅れが出ている場合、メンバの生産性が低くなっている可能性があります。
その原因を理解し、対策を行うことで生産性を向上させる取り組みを行います。
例えばメンバの技術不足が原因の場合、技術支援メンバのサポートをつけたり、テンプレートとなるプログラムソースを提供するといった対策が考えられます。

進捗遅延は発生していなくてもアドバイスすることでメンバの生産性がより向上する可能性もあります。
そのアドバイスをするにしても進捗確認で状況を正しく把握する必要があります。

タスクごとの作業規模見直し

進捗遅れは当初想定したタスクの所要工数では足りない場合でも発生します。
新しい工程に着手したときなど、実際に作業を始めてみたら思ったより大変だった、という経験はあると思います。
そのときは実態に合うようにスケジュールを見直すか、優先度の低いタスクを削減するなど対策を検討します。
遅延したタスクと同じように所要工数不足と思われるものがあれば、それらもまとめて見直します。

トラブルの早期発見

進捗報告ではメンバから提示された課題や問題報告を受けます。
またはメンバも気付いていない事象が報告の中に含まれている可能性もあります。
報告内容に違和感を感じる場合、深堀して確認していくことでトラブルを早期発見することもあります。

トラブル要因は早期発見することで対処が容易になります。
ただ進捗具合を聞くだけでなく、気になる点があれば掘り下げて確認していきます。

作業負荷の平準化

作業を進めていくとメンバのスキルや突発作業の有無により、メンバごとの作業負荷にバラつきが出ることがあります。
そのバラつきを抑えて、作業負荷を分散させるようにタスクの担当割り振りを見直すことも大切です。

ちなみに他メンバのタスクを割り当てられることに納得できないメンバも出てくることがあります。
メンバの勤怠上の都合であったり、仕事に対する考え方に起因しているかもしれません。
そのような場合はしっかり話し合ったうえで妥協点を探すことが大切です。

進捗状況を正しく把握する方法

メンバ間の情報共有

進捗状況をメンバから報告を受けるのですが、その内容をチーム内で共有することは大切です。
プロジェクトリーダの視点では気づかなくても、他の開発者視点で見ると気づく課題や問題があります。
また他メンバの報告が自分の作業に影響がある可能性もあり、その結果によっては作業の見通しに影響が出る可能性もあります。

このようにメンバ間で情報共有することで、メンバが現状を正しく把握することにつながります。
結果として、進捗報告の精度が高まることにもつながります。
チームで動いている以上、メンバ間で連携して作業を進めるため、足並みを揃えるためにも情報共有することが大切です。

メンバを集めて進捗報告会を行うのが難しい場合、文書だけで報告したり、メンバ毎に個別で状況ヒアリングする場合もあります。
そのような状況でも、他メンバが何をしているように状況を整理して共有するといった仕組みが必要です。

進捗率のルール化

進捗報告では作業の進み具合を進捗率で表現するのが一般的ですが、この進捗率を出すためのルールを明確にする必要があります。
メンバの匙加減でパーセントを出すのではなく「どこまで進んだら50%」のように機械的に出せるルールを定義します。

メンバごとに設定基準が異なってくると、進み具合のパーセントが妥当なのかわからなくなります。
進捗遅延で責められたくないため、あえて進捗をよく見せて報告することも考えられます。
いつまでも進捗率90%から進まない報告をされても困ります。

この進捗率のルールはプロジェクト特性にもよりますが、タスクを細分化して完了したタスク数を進捗率に適用する方法があります。
1つのタスクを2~3日程度までに分解するのが望ましいです。
あまり細かすぎても管理は難しいくなるため、できる範囲のバランスを見ながら調整します。

心理的安全性の確保

メンバから進捗状況を正しく収集するためには、心理的安全性が大切です。
心理的安全性とは、何かに脅かされることなく素直に自分の考えや気持ちを発信できる環境を言います。
例えば進捗遅れが発生したり、作業ミスをしたときに責め立てられるようなチームの中では悪い報告をしたくないという気持ちになります。
できるだけ聞こえのよい報告の仕方をするようでは正しく進捗状況を把握することができません。

そのような状況の場合、正しい報告を上げられない環境を作ったリーダやプロジェクトマネージャに責任があります。
メンバが安心して作業を行い、悪い知らせほどはやく報告してもらえるようなプロジェクト運営が大切です。

進捗状況報告の内容

プロジェクトの進捗状況

進捗はマスタスケジュールや中日程スケジュールのガントチャートに進捗を示すイナズマ線をつけて全体像を表現します。
そのうえで進捗率や作業の消化数といった定量値と、作業状況の定性情報を記載します。
定性情報は文書のように状況を説明するのではなくポイントを箇条書きで表現してください。
文書だと読み手によって意味の捉え方に差が出る可能性があります。

また実績報告と合わせて、今後の作業予定、プロジェクトのイベントについても記載します。

課題と解決策

進捗報告ではマイナス要因となる課題や問題こそ重点的に報告します。
課題や問題を隠蔽するプロジェクトは失敗します。

クライアントや上司を刺激しないよう、できるだけ課題や問題を見えないようにするプロジェクトは、何かトラブルが起きたときに報告と現実が合わなくなります。
隠蔽体質のあるプロジェクトでは、報告内容の辻褄が合わなくなると報告内容に手を加えるようになります。
小さいプロジェクトなら上手くごまかせるかもしれませんが、管理運営をしっかり対応する必要のあるプロジェクトでは上手くいくはずもなく、いずれは破綻します。

報告先には誠意をもって真実を伝えるべきであり、それが信頼関係を構築する第一歩です。
もし「課題を伝えたら大騒ぎされる」という報告先の場合、報告の仕方に問題があるかもしれません。
課題に対する解決策、解決に向けた取り組みを十分に説明しているでしょうか。
問題点だけ強調されると困りますし、心配や不安になるのは当然です。

「問題や懸念事項を隠さず伝えてもらえること」「しっかり問題解決してくれる」という人が信頼されます。
それを成したとき、クライアントや上司と強いつながりができます。
逆に課題や問題を隠したという実績が1度でも発覚すると、2度と信用されることはありません。

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