プロマネガイド

プロジェクトマネジメントの学習方法 – 基礎から学び実践できるようになる

はじめに

プロジェクトマネジメントのスキルを習得するには学習と実践が必要です。

基礎を学習していないと、マネジメントの行動軸にブレがでます。
過去のプロジェクト経験だけでは知識に偏りがあったり、間違った理解をしている可能性もあります。

逆に実践経験が少ないと、プロジェクト状況にマッチしない管理手法を取る可能性があります。
プロジェクト成功のため、時にはマネジメントのセオリーから外れたことを行うこともあります。
状況によって臨機応変に動くには、実践経験が必要です。

それらを踏まえ、プロジェクトマネジメントのスキルを体系的に学ぶ方法について解説します。

取り組み準備

スキル習得の目的

最初に、なぜプロジェクトマネジメントを習得したいのか、その目的を明確にします。

例えば資格を取得することが目的であれば、対象の資格勉強に注力することになります。
プロジェクトマネジメントを体系的に学びたい人は全体像から知る必要がありますし、現時点でプロジェクトに困りごとがあるなら、その部分にポイントを絞って学習するとよいです。

自身のマネジメント能力に問題ないと感じている人は、自身のスキルを棚卸するとよいです。

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学習環境

学習教材
学習には、本などの教材を購入したり、セミナーに参加する方法が有効です。
ただし、それなりに費用が発生するため会社の補助など利用できるのであれば活用します。
それ以外でも、無料セミナーが開催されていたり、Kildleなど無料で読める書籍もあります。

協力者
社内など身近に経験豊富な人がいるのであれば、アドバイスをもらったりメンターになってもらうとよいです。
「教えてください」と頼めば、多くの人は快く支援してくれると思います。

基礎教育と資格取得

基礎からスキルを学ぶのであれば、まず知識体系を学習するところから始めます。
ここで学習するのはPMBOKとアジャイルに関する知識です。

PMBOK

PMBOKはプロジェクトマネジメントの分野で広く認知されている標準的な知識体系です。
第6版まではウォーターフォール型のプロジェクトマネジメントを中心に解説されていましたが、第7版からはアジャイルも含めた知識体系となっており、内容が大きく変わっています。
学習するのであれば第7版だけでなく、第6版の知識体系も学習するとよいでしょう。
ウォーターフォール型のプロジェクト現場では、今でも第6版の知識体系でマネジメントされていることが多いです。

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アジャイル

アジャイルは、ソフトウェアを素早く開発するための概念です。
その概念に則ってプロジェクト推進するフレームワークとしてスクラムやXPなどの開発手法があります。

アジャイル中心に担当している人は実践の中で改善しながらスキルを習得していきます。
アジャイル初学者の人は、まず書籍(アジャイルサムライなど)を購読したうえで、関連しそうな開発フレームワークを学習します。
この学習については、セミナーなどで体験しながら学習すると効率的です。

ウォーターフォール型のプロジェクトを中心に活動している人もアジャイルがどういったものか学習することは有益です。
ウォーターフォールとアジャイルのハイブリット型プロジェクトも少なくありません。
プロジェクトの行動幅を増やすためにも、理解を深めるとよいでしょう。

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資格を取得する

プロジェクトマネジメントのスキル習得が目的でも、資格取得を目指すとよいです。

網羅的に学ぶことができる
資格取得という目的をもって学習することで、知識を吸収しようというマインドが強くなります。
また、試験に合格するためには苦手分野も克服する必要があります。
試験対策や模試を行う中で自身の苦手分野に気づくことが出来ます。

知識と学習の証明
どれだけ知識を持っていたとしても、クライアントや外部組織に知識を証明できるのは資格の有無だけです。
また「マネジメントを学習していない」とみられる可能性もあります。

実務経験

プロジェクトマネジメントの実践

習得した知識は実践で使用することで身に付きます。

マネジメントの実務経験がない人は小規模プロジェクトから始めることになると思いますが、どのプロジェクトでもやるべきことに大きな差はありません。
学んだ知識を積極的に使用し、その結果を振り返るようにします。

既にプロジェクトマネジメントを担当されている人は、学んだ知識を実務の中に取り込みます。
プロジェクトの課題や気になっている点にフォーカスして学習、実践するとよいでしょう。

もしマネジメントする立場でない人は、自分の作業範囲を1つのプロジェクトに見立ててマネジメントしてみるとよいです。
自身の行動を計画立て、スケジュールや課題・リスク管理を行うことでスキルを習得できますし、うまくいけば自身の作業効率が上がるかもしれません。

メンターシップ

身近にプロジェクトマネジメントに精通している人がいれば、現在のプロジェクト状況をチェックしてもらい、アドバイスやフィードバックをもらうとよいです。

上手くできていると思っていても、人から見たら問題があるかもしれません。
自分では気づかない点をメンターに指摘してもらうことで欠点を補うことができます。

そのようなメンターがいない場合は、セミナー講師に質問したり、後述するコミュニティに参加してアドバイスを受けることもできます。

スキルの育成

スキルは実践の中で習得していきますが、その中でも習得が難しいスキルは日頃から意識して改善することが大切です。

交渉術

プロジェクトマネージャは、クライアント、社内の上層部や他部署、社外チーム、プロジェクトメンバなど様々なステークホルダーと交渉します。
そのため交渉術は欠かせないスキルなのですが、容易に習得できるものでもありません。
様々な立場や考え方のステークホルダーがいますし、一方的にこちらの考えを伝えるだけでは調整ができません。
相手の言い分を聞いてばかりではだめですが、逆に一方的に相手へ押し付けるような交渉も問題を起こす原因となります。

交渉術のスキルを伸ばすためには、次の点を考慮しながら実践を積むとよいです。
・交渉に臨む前に、相手の立場、目標、制約条件を徹底的に調査する
・自身の目指すゴールを設定し、そこに向けた交渉のストーリーを用意する
・交渉中に相手の意見をしっかりと聞き、相手が何を求めているのか把握する
・交渉後に振り返りを行う

リスク管理

リスク管理のスキルは、プロジェクトの経験値に大きく影響されます。
リスクは過去のプロジェクト経験が多いほど検知できる幅が大きくなります。
特に失敗経験を多く積んでいる人はリスク感度が高くなるのですが、そのためには失敗プロジェクトから教訓を得ようとする姿勢が重要です。

実際に自身で経験するだけでなく、他プロジェクトの情報を収集したりセミナー受講や書籍を読む方法でも経験値を増やすことが出来ます。

ステークホルダーの調整

プロジェクトのマネジメント・コントロールで最も難しいのが人間関係です。
特に関係が拗れている状態ではトラブルが多発するため、プロジェクト成功率が下がります。

プロジェクトマネジメントする側として、まずはどのような相手とも冷静に会話できるようなコミュニケーション能力を身に着けると最良です。
ただコミュニケーション能力は人の個性によるところもあり難しい場合もあるので、その場合は人の話を傾聴することを意識しましょう。

そのうえで、ステークホルダーの特徴を整理することが有効です。
どのような性格・考え方なのか整理しておくことで、話の進め方や調整の仕方の参考になります。

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継続的な学習とフィードバック

トレーニング・セミナー

プロジェクトマネジメントのスキルは広く、そして深いため学習に終わりはありません。
継続して学習することでプロジェクトの成功率を上がります。
また大規模プロジェクトのマネジメント参加など仕事の幅が広がります。
仕事の幅が広げられれば、本人のキャリアパスの選択肢も増えるでしょう。

学習の方法としては、書籍を読んだりセミナー受講がポピュラーです。
ただ漫然と書籍を読んだりセミナーを聴くだけではなく、その中から1つでもよいので持ち帰りたいポイントを見つけ出そうとする姿勢が重要です。

学習のテーマはプロジェクトマネジメントのスキルに絞る必要はなく、コミュニケーション方法やチームの作り方、マネジメントツールの使い方など幅広く手を出すとよいです。
得た知識は以外なところで役に立つこともありますし、新しい気づきを得ることもあります。
学習に無駄はないため、色々とチャレンジしてみましょう。

プロジェクト振り返り

プロジェクト終結時、またはフェーズゲート(工程の切替わり)でプロジェクトの振り返りを行います。
当初の予定と実態の比較、プロジェクトで上手くいったことや失敗したことについて、プロジェクトメンバとミーティングを開催して振り返ります。
プロジェクト運営状況の評価についてフィードバックを受けることで、反省点や改善点を見つけることが出来ます。
また良かった点については、引き続き活用するようにします。

この振り返りがマネジメントスキルを向上させる一番よい機会です。
是非、活用していきましょう。

コミュニティ参加

外部コミュニティ

会社などの所属組織とは別にプロジェクトマネジメントの学習や啓発をテーマとしたコミュニティを活用することも有効です。

例えばPMBOKで有名な組織であるPMI(日本支部)PMAJ(日本プロジェクトマネジメント協会)といった組織が主催するプロジェクトマネジメントのコミュニティです。

このコミュニティではプロジェクトマネジメントに関する研究や部会を開催しており、日々切磋琢磨しています。
ただ話を聴くセミナーとは異なり、自身も活動に参加することができるので、知見を広げることが出来ます。
プロジェクトマネジメントのスキルアップを目指すなら、参加することをオススメします。