【目次】
・なぜ「プロジェクト人材育成」が重要なのか
・プロジェクト人材に求められる3つの力
・育成の全体像:3つのステップで考える
・レベル別に考えるプロジェクト人材育成
・現場でできる育成の具体的な取り組み
・育成を阻むよくある落とし穴とその対策
・まとめ
なぜ「プロジェクト人材育成」が重要なのか
多くの現場で、こんな悩みが聞こえてきます。
- 「PM一人に負荷が集中してしまう」
- 「任せられる人が育たず、いつも同じ人に頼ってしまう」
- 「若手に経験を積ませたいが、失敗が怖くて任せきれない」
プロジェクトは、PM一人では回りません。
要件定義、設計、テスト、調整、ステークホルダー対応など、現場で動いてくれる「プロジェクト人材」がいて初めて、計画どおりに前へ進みます。
しかし、多くの組織では「育成」が場当たり的になりがちです。
- 忙しくなってから「とりあえずアサイン」
- 教える時間がなく「見て覚えて」で放置
- 失敗すると「やっぱり任せなきゃよかった」で育成が止まる
この記事では、こうした状況から一歩抜け出し、「意図的にプロジェクト人材を育てる」ための考え方と具体的な方法を整理します。
マネジメントの初学者や、育成でつまずいている方でも取り組みやすいよう、専門用語はなるべくかみ砕いて説明します。
プロジェクト人材に求められる3つの力
まず、「どのような人材を育てたいのか」をはっきりさせることが重要です。
プロジェクト人材に求められる力は、細かく分ければたくさんありますが、ここではシンプルに「3つの力」に整理します。
思考力・理解力(物事を筋道立てて考える力)
- 指示の背景や目的を理解しようとする
- 作業を「なぜやるのか」「ゴールは何か」とセットで捉えられる
- 問題が起きたときに、原因を整理して説明できる
この力が弱いと、言われたことはやるけれど、状況が変わると対応できない「指示待ち人材」になりがちです。
コミュニケーション・協働力(周囲と連携して動く力)
- 報連相(報告・連絡・相談)がタイムリーにできる
- 相手に合わせて説明のレベルや表現を変えられる
- チーム内で相談しながら進められる
プロジェクトはチーム戦です。
個々のスキルが高くても、連携できなければ成果につながりません。
実行力・セルフマネジメント力(やり切る力)
- 決めたことをやり切る
- スケジュール・タスク・自分のコンディションを自分で調整できる
- 難しい状況でも、必要な支援を自分から取りにいける
プロジェクト人材の育成では、「知っている」だけでなく、「現場でやり切れる人」を増やすことがゴールです。
この3つの力を育てていくイメージを持つと、育成のポイントが見えやすくなります。
育成の全体像:3つのステップで考える
育成を「個人の努力」に任せてしまうと、属人的になり、再現性がありません。
ここでは、育成を次の3ステップで整理してみます。
- 役割と期待の明確化
- 学ぶ機会の設計(OJT/研修/自己学習)
- フィードバックと振り返りの仕組み
ステップ1:役割と期待を明文化する
まずは、「この人に何を期待しているのか」をはっきりさせることです。
- どの範囲の業務を任せたいか
- どのレベルまで自律的に判断してほしいか
- いつ頃までに、どの状態になっていてほしいか
これを言語化して共有することで、本人も上司も「どこまでできればOKなのか」が揃います。
例)
- 「3か月後までに、小規模タスクの計画〜進捗管理を一人で回せるようになる」
- 「次のプロジェクトからは、テストチームのリーダーとしてメンバー2〜3名を率いる」
ステップ2:学ぶ機会を設計する
期待を明確にしたら、「どうやってそこまで育てるか」を考えます。
育成の機会は、大きく3種類に分けられます。
- OJT(On the Job Training):実プロジェクトでの経験
- Off-JT(研修・勉強会):座学・演習など
- 自己学習:書籍・eラーニング・動画など
どれか一つに偏らず、組み合わせることがポイントです。
例)
- プロジェクト計画の立て方は、研修+テンプレート説明(Off-JT)
- 実際の計画作成は、小さなプロジェクトで体験(OJT)
- 補足として、PMBOK入門書を自己学習用に紹介(自己学習)
ステップ3:フィードバックと振り返りの仕組み
育成で一番もったいないのは、「やらせっぱなし」にすることです。
行動したあとに、必ずフィードバックと振り返りの場をセットにします。
- 良かった点・工夫した点を具体的に言葉にする
- 改善したい点は「次回どうするか」まで一緒に考える
- 定期的な1on1で、育成の進捗を確認する
この「行動 → フィードバック → 次の行動」というサイクルが、育成のスピードを大きく左右します。
レベル別に考えるプロジェクト人材育成
人材のレベルによって、育成のアプローチは変わります。
ここでは、シンプルに3つのレベルで考えてみます。
- 初級:プロジェクト経験が浅いメンバー
- 中級:自分の担当領域は自走できるメンバー
- リーダー候補:他のメンバーを巻き込めるようになってほしい人
初級:まずは「プロジェクトの型」を体験させる
初級メンバーには、難しいことを教えすぎないことがポイントです。
- WBSや進捗表など、「プロジェクトの型」に触れさせる
- 一連の流れ(計画 → 実行 → 確認 → 調整)を何度か体験させる
- 小さなタスクを任せ、期限と品質の意識を持たせる
この段階では、「プロジェクトとはこういうものだ」という感覚をつかんでもらうことを優先します。
中級:任せる範囲を広げて「小さなPM経験」を積ませる
中級レベルには、単なる担当者から一歩進んでもらう段階です。
- 小規模タスクの計画・進捗管理を任せる
- 関係者との調整役を経験させる
- 課題が起きたときの報告・相談の仕方を指導する
たとえば、「テスト工程のリーダー」「サブプロジェクトの担当PM」など、小さなPMロールを任せて実践経験を積ませます。
リーダー候補:人と組織を動かす視点を持たせる
リーダー候補には、「自分の仕事」だけでなく、「チームとしての成果」を考えてもらう必要があります。
- メンバーの特性を踏まえたアサインや指示の出し方
- チーム内のコミュニケーション設計(打合せの場づくり、情報共有の仕組み)
- 上位のPMやマネージャーとの報告・調整の仕方
この段階では、「自分がやった方が早い」から卒業し、「どうやったらチームとして成果を出せるか」という視野を広げることが育成テーマになります。
現場でできる育成の具体的な取り組み
ここからは、実際の現場で今日から取り入れやすい育成の工夫をいくつか紹介します。
仕事の「任せ方」をデザインする
ただ「やっておいて」と丸投げするのは育成ではありません。
任せるときは、次のポイントを意識します。
- 目的:なぜその仕事が必要なのか
- ゴール:いつまでに、どんな状態になっていればよいか
- 裁量の範囲:どこまで本人に任せ、どこから相談してほしいか
- サポートの前提:困ったときにどう相談してよいか
最初は詳細にフォローし、慣れてきたら少しずつ本人の裁量を広げていくことで、自律性が育っていきます。
定期的な1on1で「育成のための対話」をする
進捗確認だけの打合せでは、なかなか育成は進みません。
月1回でもよいので、「育成」をテーマにした1on1を設けることをおすすめします。
- 最近うまくいったこと・成長を感じたこと
- 困っていること・不安に感じていること
- 次の1〜3か月でチャレンジしたいこと
このような対話を通じて、本人の意欲や方向性を確認しながら、育成の方向を一緒に考えます。
レビューに「育成の観点」を入れる
成果物レビューやプロジェクト振り返りを、育成の場としても活用します。
- ダメ出しだけでなく、「良かった点」を具体的に伝える
- 「ここはこうするともっと良くなる」という形で改善案を示す
- なぜその観点が大事なのか、背景もセットで説明する
「なぜそれが大事か」まで伝えることで、単なる修正指示ではなく、考え方のインストールになります。
小さな成功体験を意図的に作る
育成では、本人が「自分でもできた」「成長している」と感じられることがとても重要です。
- 期限内にタスクを完了できるよう、負荷を調整する
- 初めてのチャレンジでは、難易度を少し低めに設定する
- 成果が出たタイミングで、周囲の前でねぎらいや称賛をする
こうした小さな成功体験が、次のチャレンジへの原動力になります。
育成を阻むよくある落とし穴とその対策
最後に、現場で陥りがちな落とし穴と、その対策を整理します。
落とし穴1:「忙しいから育成は後回し」
プロジェクトが忙しくなると、どうしても目の前の納期が優先され、「育成は余裕ができたら」となりがちです。
しかし、余裕ができる頃には、また次のプロジェクトが始まります。
対策:
- 「毎月1時間だけ育成のための時間を確保する」など、小さくて続けられる仕組みにする
- 育成を「投資」として、プロジェクト計画の中に最初から組み込む
落とし穴2:「できないこと」ばかりを見る
育成対象者の「足りないところ」ばかりに目が行くと、お互いにストレスが溜まり、本人の自信も失われます。
対策:
- まずは「できていること」「伸びている部分」を言葉にする
- 改善点は「次に一緒に目指すレベル」として伝える
- 評価と育成の場を分け、育成の場では安心して相談できる空気を意識する
落とし穴3:「任せる」のではなく「丸投げ」してしまう
忙しさのあまり、「とりあえず頼んだよ」で終わってしまうと、本人は何を基準に判断してよいか分からず、不安ばかりが増えます。
対策:
- 任せる前に、目的・ゴール・裁量の範囲を確認する
- 最初だけでも、進め方のイメージを一緒に考える
- 中間報告のタイミングをあらかじめ決めておく
まとめ
プロジェクト人材の育成は、特別なイベントではなく、日々のマネジメントの中に組み込むものです。
本記事でお伝えしたポイントを、改めて整理します。
- プロジェクト人材には「思考力・理解力」「コミュニケーション・協働力」「実行力・セルフマネジメント力」の3つの力が必要
- 育成は「役割と期待の明確化 → 学ぶ機会の設計 → フィードバックと振り返り」の3ステップで考える
- レベル(初級/中級/リーダー候補)に応じて、任せる範囲や育成テーマを変える
- 任せ方・1on1・レビュー・成功体験づくりなど、現場でできる工夫を積み重ねる
- 「忙しいから後回し」「できないところばかり見る」「丸投げ」といった落とし穴を避ける
一気に完璧な育成プランを作る必要はありません。
まずは、一人のメンバーに対して、3か月間の育成テーマを決めてみるところから始めてみてください。
小さな一歩でも、「育てよう」と意識して関わることで、数か月後にはチームの雰囲気やプロジェクトの進み方が変わってくるはずです。

