概要
コストベースラインとは、プロジェクトの予算の計画と管理を行うための基準となるものです。
スコープとスケジュールなどの情報をもとに作成します。
ここではプロジェクトの予算を設定するために、各工程の作業コストや設備費用などを算出します。
また予算配分の調整、追加予算やスコープ見直しの検討も行います。
予算の設定
見積もり手法
コストの見積もり手法については「スケジュール・ベースラインの作成」にあるアクティビティの所要期間設定が参考になります。
ここで積み上げた工数とメンバの単価を計算することでコストを算出することができます。
また外部委託する場合は、委託先から提示された見積もりも関係します。
見積もり精度
見積もりは作業内容が具体的になっているほど精度が高いです。
プロジェクト開始前のように不明瞭な点が多い場合は見積もり精度が低くなります。
見積もりは工程が進むごとに精緻化することができます。
超概算見積もり
プロジェクト開始前など、どれくらいの規模感なのか見当をつける場合に算出する見積もりです。
要件定義で「何を作るのか」を検討する前の見積もり根拠となるデータが少ない場合に行われます。
見積もり精度:-25% ~ +75%
超概算見積もりの手法には次のようなものがあります。
アナロジー法
類似した過去のプロジェクトを参照して見積もります。
過去のプロジェクトのデータを基に、現プロジェクトの規模や複雑さを比較し、見積もりを算出します。
エキスパートジャッジメント
経験豊富な専門家に意見を求める方法です。
これらの専門家は、類似のプロジェクトや特定の技術分野に関する知識を活用して、見積もりを提供します。
パラメトリック推定法
特定のパラメータ(例えば、開発に必要な労働時間やコード行数)を使用して、コストや時間を推定します。
予算見積もり(概算見積もり)
超概算見積もりより詳しいデータを使用して、プロジェクト立ち上げで必要となる予算設定する場合に行われます。
見積もり精度:-10% ~ +25%
概算見積もりの手法には次のようなものがあります。
ファンクションポイント
ソフトウェアの機能の規模と複雑さを数値化して測定する手法で、開発労力やコストの見積もりに用いられます。
ファンクションポイント法については、別記事「ファンクションポイントでプロジェクト規模を算出する方法」で解説しています。
パラメトリック推定法
超概算見積もりでも使用する方法ですが、要件定義の情報をもとに、より精度の高いパラメータ情報を使用して見積もります。
三点推定法
最悪のケース、最良のケース、および最も可能性の高いケースの三つの異なる見積もりを行い、これらの平均を取ることで全体の見積もりを算出する方法です。
この手法は、不確実性が高いプロジェクトに適しています。
確定見積もり
要件定義を実施後、詳細なデータを使用して精度の高い見積もりを作成します。
プロジェクトで作成した成果物をもとにボトムアップ型見積もりを行って作成します。
見積もり精度:-5% ~ +10%
確定見積もりの手法には一般的に次の方法で見積を行うことが多いです。
ボトムアップ推定法
WBSなどプロジェクトを最小の作業単位まで分解し、各タスクの詳細なコストと時間を個別に見積もります。
その後、これらの個別の見積もりを合計して、プロジェクト全体の見積もりを作成します。
このように作成するタイミングにより見積精度が異なります。
また要件定義の結果によって開発規模が変化することがあります。
そのため、システム開発を受注するときは、開発工程によって次のように契約を分けることが多いです。
・要件定義 :準委任契約
・設計~結合テスト :請負契約
・システムテスト~本番リリース:準委任契約
もし発注者が「要件定義から全てワンストップで請負開発にしてほしい」という場合は、要件定義で開発規模が変更するリスクに注意してください。
コンティンジェンシー予備
プロジェクトでリスクが顕在化したときの対処計画をコンティンジェンシープランといい、そのプランを実行するための予算をコンティンジェンシー予備と言います。
予想されるリスクを一覧管理し、リスク発生時のアクションプランを計画し、そこで使用するコストを積み上げたものがコンティンジェンシー予備となります。
作業工程が進み、想定リスクが発生しなかった場合はコンティンジェンシー予備を解放することもあります。
ちなみにコンティンジェンシー予備はプロジェクト内の管理です。
そのため必要に応じてプロジェクトマネージャの裁量で使用することができます。
マネジメント予備
コンティンジェンシー予備は、想定したリスクに対する予算を割り当てました。
それとは別にリスクとして特定できない「未知の未知」と言われる、まったく想定外の事態に対する予算をマネジメント予備といいます。
何に使うか明確に決まっていないため、この予算はプロジェクトマネージャではなく、スポンサーやプロジェクトオーナーなどが管理します。
そのためマネジメント予備を使う場合は予算を持っているステークホルダーの承認が必要になります。