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なぜなぜ分析で原因分析する理由と進め方 – 成果を出す4つのポイント

はじめに

発生した問題に対して根本原因を特定する手法として「なぜなぜ分析」があります。
これは事象に対して原因を深堀していくことで真因を見極めるために活用されます。

この分析手法は、システム開発・保守では問題やトラブル発生時で利用することがあります。
ただ正しい方法で分析を行わないと真因にたどり着けないどころか、責任追及の場となり人間関係を悪化させる場合もあります。

既にご存じかもしれませんが、なぜなぜ分析の進め方を振り返りながら正しい方法を確認していきましょう。

なぜなぜ分析の目的

問題の真因を特定する

システムトラブルが発生した場合、原因を特定して対策します。
なぜならトラブルの原因を放置しておくと問題が解決されず、被害が拡大するためです。
それと同様に、作業プロセスや業務トラブルにおける問題に対しても原因を特定する必要があります。

例えばリリース作業でミスが発生した場合、原因分析を行わないと後日、同様のミスが再発する可能性があります。
この分析も真因までたどり着かないと、対策しても問題が再発する可能性があります。
リリース作業ミスの真因が「手順書を事前に確認する環境がない」なのに、「メンバ増員して作業のクロスチェックを行う」という対策をとっても意味がありません。

原因を分解する

問題が発生したとき、複数の真因が絡んでいる場合があります。
その対策を検討には、それぞれの真因に対して個別に対策を検討する必要があります。

例えばリリース作業ミスの真因が「今までの手順と同じと思い込んでいた」「手順が違うことを指摘できなかった」という2つがあった場合、両方対策しないと問題が再発される可能性があります。
なぜなぜ分析では事象に対して原因を分解しながら深堀していきます。

なぜなぜ分析の進め方

なぜなぜ分析の進め方について解説します。
分析で使用する分析シートのサンプルを用意しているので、参考にしてください。

なぜなぜ分析フォーマット(サンプル)

問題の設定

最初に分析対象の問題を記載します。
ここでは発生した事象に加えて、背景や経緯についても明記するのが大切です。
問題設定が曖昧だと、分析が誤った方向に進む可能性があります。

また、この分析結果は第三者が参考にしたり報告を受けるときにも参照されます。
そのときに、事象が理解できないと分析内容が正しいのか判断することができません。
当事者以外が参照することを意識して記載します。

原因分析

発生した問題に対して原因を考察していきます。
上記のサンプルでは、「なぜ1」などの欄に原因を記載していきます。
1つの事象に対して複数の原因が含まれている場合もあるので、そのときは原因を分解していきます。

この原因分析は、以下の点に注意して進めます。

  • 事象を曖昧にしない
  • 複数の原因がある場合は分解する
  • 主観ではなく事実に着目する
  • 自分たちでコントロールできる範囲にとどめる
  • 人の責任を追及しない

原因の分析を行ったら、抽出した原因を深堀するため、さらに原因分析します。
この分析を繰り返す回数に決まりはありませんが、少なくとも3回は必要でしょう。

これ以上、深堀できないというレベルまで「なぜ」を繰り返すのですが、何回繰り返しても真因が見えない場合、上記の注意点を意識して分析を見返してください。

原因の特定

原因を分析したら真因を特定します。
真因はシステム開発・保守の作業トラブルの場合、次のいずれかに収束します。

  • 作業プロセスの不備
  • 組織・体制の問題
  • 環境問題

真因から逆にさかのぼり「(原因)だから、この問題が発生した」とつながることができていれば成功です。

上記の真因について補足です。
ヒューマンエラーなど人的ミスも、上記のいずれかに含まれます。
特定のメンバが作業ミスをしたからと言って、その人が悪いとか問題がある、という話ではありません。
「人はミスをする」を前提として、トラブル抑止、リカバリ方法などのプロセスがプロジェクトに足りなかったため問題が発生したと考えます。

改善策の実施

真因を特定したら、それに対する改善策を検討して実施します。
この進め方はPDCAサイクルを回しながら課題対応として進めていくため、対策を実施した後も改善策が妥当か観察し、必要あれば対策の見直しも行います。

この改善策の検討ですが、当事者を集めて全員で検討すると良いでしょう。
上位から指示が出るより、メンバが自分たちで検討に参加することで当事者意識が出てきます。
改善策の背景も理解するので、前向きに取り組んでもらえます。

なぜなぜ分析の成功ポイント

場の緊張を解く

なぜなぜ分析は原因追及する取り組みなので、進め方を間違えるとを個人攻撃や責任追及するような場になる可能性があります。
ヒアリングを受けているメンバが「責められている」と捉えられることもあります。
これでは正しい情報を得ることもできず、分析することができません。
場合によっては人間関係が悪化する可能性もあります。

そのため最初になぜなぜ分析の主旨を全員に理解してもらうことが重要です。
プロジェクト改善が目的であり、人を責める場でないことを理解してもらいます。

メンバを集めて分析するときは、場の緊張を解くように明るい雰囲気で進行します。
深刻な空気管では、参加者が緊張してメンバの発言にフィルターがかかります。
また分析をしている中で人の責任を追及するような流れになったら、ファシリテーターが軌道修正します。

問題を具体化する

なぜなぜ分析は問題の原因を特定して対策を取るための活動です。
そのため、基点となる問題が曖昧だったり抽象的だと、何を分析すればよいかわからず迷走します。

例えば、問題の定義が「リリース作業でミスをした」だけでは背景が何もわからないので分析できません。
「リリース作業において手順書に誤りがあり、更新すべきでない設定ファイルを上書きした」のように事象を具体化することで、分析の精度が高まります。

仕組みにフォーカスする

なぜなぜ分析で改善したいのは環境や業務プロセス、組織です。
原因を分析するときに、人にフォーカスして分析すると人やチームに対する攻撃になります。
それは望ましくないので、人の感情は除外して事象だけに注力し、プロジェクトの仕組みにフォーカスして分析します。

例えば「リリース作業でコマンド入力ミスをした」という問題に対して「作業者が注意不足だった」という理由を挙げたところで、何の改善にもつながりません。
「コマンドを全て手入力していた」「チェック体制がなかった」のように、その問題を回避する仕組みについて検討します。

一人より複数人で行う

なぜなぜ分析は、一人で行うより複数人で行うことで精度を高められます。
一人で行うと結論ありきで分析してしまうこともあるため、多角的に分析するためにも複数人で参加することが望ましいです。

可能であれば、職場にいる知り合いなど第三者に協力してもらうことも有効です。
第三者視点からチェックすることで、当事者では気づかない問題点を発見することもあります。

おわりに

なぜなぜ分析に慣れていないと、納得できる真因にたどり着くことは意外と難しいです。
分析の目的をメンバ間で共有して進めることが重要になりますので、十分な説明をしてから始めてください。

今回、作業プロセスを中心に例を挙げていますが、不具合調査やトラブル対応でも利用できます。
トラブル対応については別記事「システム障害発生時に対応する5つの手順」で解説しているので参考にしてください。