スキル

「プロマネ」という役割のイメージと実態 – プロマネの魅力について考える

はじめに

システム開発のプロジェクトでは、様々な役割の専門家が集まってチームを作ります。

IT人材と聞くとシステムエンジニアやプログラマが真っ先に思いつきますが、プロジェクトに必ず存在するプロジェクトマネージャ、いわゆる「プロマネ」も含まれます。

プロマネはプロジェクト成否に直結するほど重要なポジションなのですが、「プロマネになりたい」と本気で考えている人は少ないように感じています。
むしろ「できればプロマネになりたくない」と考えている人の方が多いのではないでしょうか。

今回は、プロマネに対する周囲のイメージを聞きながら、その実態はどうなのか見ていきたいと思います。
そのうえでプロマネの魅力についても触れていきます。

プロマネのイメージ

ネガティブな意見

これまで出会ったエンジニアのうち、プロマネを目指している人は多くありません。
むしろ、プロマネに対するネガティブな意見の方が強いように感じています。

そこで、プロマネになりたくない、または興味のない人たちに理由を聞いてみました。
理由はいくつかありますが、主に次のポイントがあげられるようです。

①いつも忙しくて苦労している

エンジニアから見ると、プロマネがどのような役割で何をしているのかわからない、という意見が多くありました。
ただ、いつも忙しそうにしていたり、交渉や調整で気苦労が多いように見えるようで「その立場になりたくない」と感じているようです。

中には、プロマネ恐怖症と思える人もいます。
その人たちは突然プロマネに指名され、知識やスキルがないままプロジェクトを任せられた経験がりました。
よくわからずプロジェクトを進めた結果、炎上させてしまうこともあるようで、そうなってしまうと、そのメンバーは「プロマネになるのは怖い」と感じているようです。
任命する側がプロマネの重要性を理解していないケースでありがちなのですが、若手プロマネを教育や指導もせずに放置されることも少なくないようです。

このような様子を見たら、プロマネになりたいと思うわけがありません。

②責任やプレッシャーが大きい

責任範囲の広さ
プロマネはプロジェクトの成功/失敗に責任を負います。
そのためプロジェクトの出来事には敏感になる必要がありますし、「ここは担当外だから関係ない」という線引きをするわけにもいきません。
立場的に範囲外の部分でも、プロジェクトに影響する可能性がある限り意識している必要があります。

ステークホルダー間の調整
プロジェクトにはクライアントやプロジェクトメンバーなど様々なステークホルダーがいます。
その誰もが意見や期待を持っており、それらを満足するようにプロマネは行動すべきと考えています。
当然すべてを満足することは難しいので、相手のプレッシャーを受けながら折り合いや調整を付けていきます。

トラブル対応の責任者
トラブル発生時は率先して行動することが求められます。
クライアントや上層部への報告義務もありますし、周囲からも色々と言われることもあるでしょう。
状況によっては頭を下げて謝罪する必要もあります。
ノイズも多く、ストレスを感じることも少なくありません。

③技術者としてのスキルが無駄にならないか?

IT企業の場合、はじめはエンジニアとして技術スキルを磨くことが求められます。
そのうちチームリーダーなどメンバーを指導する立場になっていきますが、それでも技術者としての立ち回りとなります。

ところがプロマネになると技術者ではなくマネジメントする側となるため、これまでのキャリアが活かされるのか、無駄になってしまうと心配する声があります。

確かに、プロマネになると技術者としての立ち回りとは違ってきます。
せっかく積み上げてきたスキルが無駄になってしまうなら、技術者としてスキルを伸ばした方が良いと考えることもわかります。

プロマネが上手い人の特徴

これまで、プロマネに関するネガティブな意見を見てきました。

その意見も確かにありますが、それがプロマネの全てではありません。
例えば、いつもスマートに仕事をしているプロマネもいますし、責任やプレッシャーを上手く利用している人もいます

この両者には、どのような何が違うのでしょうか。
上記のネガティブな意見に対して、プロマネが上手い人は何をしているのか見ていきましょう。

①マネジメントを学習している

まず大前提として、その人たちはプロマネについて学習をしています。
プロジェクトマネジメントをしっかり学習しているプロマネは、自身の作業も含めてプロジェクトをコントロールすることができます。

プロジェクトというのは決まったパターンというものがなく、不確実な事象をコントロールしながら推進していきます。
どのようなプロジェクトでも安定させるには、過去の経験値だけではなく基礎となる考え方や様々なスキルを組み合わせて活用することが大切です。

とはいえ、しっかりマネジメントを学習しているプロマネは以外と多くありません。
業務で経験したことのあるマネジメント方法しか知らなければ、少し毛色の違うプロジェクトになると通用しなくなります。
そもそも、その過去に経験したマネジメント方法が正しいとも限りません。

会社などでプロマネ研修を受講されたことがある人は多いと思います。
それは大切なことですが、その講義を振り返ったり現場に適用する取り組みを行っている人はどれくらいいるでしょう。
プロマネはそんなに簡単なものではなく、日頃から自己研鑽しつつ実践で習得していくものです。

もし「いつもプロジェクトが上手くいかなくて辛い」という状況であれば、環境や人の文句を言うのではなく、プロジェクトをコントロールできるように自己研鑽するほうが健全です。

②一人で抱え込まない

プロマネの「責任」とはプロジェクトを成功させることですが、ただ一人プロマネが頑張ればよい、というものではありません。
一人だけでプロジェクトに立ち向かうのは限度があります。
重要となるのが「一人で抱え込まない」ということです。

上手く人に頼る
プロマネには多くの仕事や調整が入ってきます。
それを一人で対処しようと努力した結果、仕事が処理しきれない事態になる可能性があります。

そこで、マネジメントを理解しているプロマネは自身が高負荷になってボトルネックになってしまうことを避けるため、なんでも一人でカバーしようとせず、うまく人に頼ります。
つまりプロジェクト全体がスムーズに推進することを意識しています。

周りを巻き込む
プロジェクトでは、プロマネだけでは対処できないトラブルが発生することもあります。

それらを全てプロマネ一人が背負い込もうとすると、対応が遅れて後手になることがあります。
責任とプレッシャーでプロマネがダウンすることも少なくありません。

そこでプロマネだけでは対処できないトラブルに対して、次のようなアクションを取ります。

エスカレーションする
自身の手に負えない(その可能性が高い)と判断した場合、すぐに上層部へエスカレーション(報告)します。
上層部に報告すると、その問題はプロマネだけでなく組織として対処すべき課題となります。
それで上層部が解決してくれるとは限りませんが、組織として取れるアクションもありますし、他部署とのコネクションをつなげてもらうことで解決できるトラブルも少なくありません。
対応できる幅が広がりますし、何より一人で抱え込んで悩むより精神的に良いです。

逆に、報告しないと一人でプロマネが問題を抱えることになり、夜も眠れない状況になってしまいます。

ステークホルダーを集めて相談する
プロジェクトメンバーやクライアントなど状況によって様々ですが、問題を解決するためのアイディアは一人ではなく複数人で考えるとよいです。

また、プロマネが一人で抱えている状況だと、周りから「早く問題を解決して」というプレッシャーを一方的にかけられることになります。
そうではなく、ステークホルダーを巻き込んで対処することで、皆を当事者にしてしまうのも手段です。

プロマネがプロジェクトの意思決定をする責任者ではありますが、全ての問題を一人で抱え込むのではなく、協力を得ることはとても大切です。

④プロマネこそ技術者のスキルが活きる

プロマネになると技術者として第一線で活躍することはなくなりますが、その知識やスキルはプロジェクトのマネジメントでも活きてきます。

プロマネは様々な意思決定を行いますが、システム開発などIT関連のプロジェクトであれば、技術に関する方針決めや調整も出てきます。

その判断をするために有識者に意見を聞いたり検討してもらうこともありますが、最終的に判断するのはプロマネです。
当然、すべての技術面のスキルを理解するのは無理ですが、有識者と会話したり、その内容をイメージする程度の知識は必要です。

またクライアントとの打ち合わせや説明を行うとき、技術面のスキルがあると会話の説得力が出ます。
逆に何のスキルもないために、何でも「持ち帰って検討します」と回答するようでは、「この人に話をしても意味がない」と思われてしまう可能性があります。

障害対応などトラブル発生時、プロマネに技術スキルがあれば直接指示を出すこともできるので対応がスムーズに行えることもあるでしょう。

プロマネとはいえ、技術スキルが不要になるわけではありません。
むしろ、知識があることでクライアントの信頼を得たり、メンバへの指示が的確になるなどのメリットが多いです。

プロマネの魅力

これまでプロマネに対するネガティブな意見と、プロマネを学習している人が行っている対策について述べてきました。
ここからはプロマネになることのメリットなど魅力についてお伝えします。

プロジェクト成否をコントロールできる

プロジェクトは炎上することがあります。
炎上してしまう理由は様々でしょうが、一番の要因はプロマネがプロジェクトをコントロールできなかった場合です。
逆に「プロジェクトのマネジメントは良かったが、それ以外の要因のためプロジェクトが炎上した」という話は聞いたことがありません。

プロジェクト成否を分けるのはプロマネの能力に大きく左右されます。

しかし、プロジェクトメンバはプロマネを選ぶことができません。
そのため参加するプロジェクトが成功するか、失敗するかは運の要素が大きいです。

しかし、プロマネ本人であれば話は別です。
自身がしっかりとマネジメントについて理解を深め、正しくプロジェクトをコントロールできるようになれば、プロジェクトを炎上させてしまう可能性を極力減らすことができます。
プロジェクト成否をコントロールできる立場というのは、力量のある人にとってはとても良い環境です。

とはいえ、時には炎上プロジェクトに火消として投入されることもあります。
これは確かに大変ですが、自分が炎上させた場合とフォローに入る場合では状況が違います。
変に委縮する必要はないですし、プロジェクトの問題点を全て見える化して対策をとっていけばよいだけです。

そして無事にプロジェクトの火消が完了したとき、あなたの評価は非常に高くなっているでしょう。

キャリアアップにつなげやすい

IT業界は人材不足と言われていますが、とりわけ実践力のあるプロマネは希少価値が高いです。
基本的に、現場でそれなりに実績を上げた人が次のステップとしてプロマネとなるケースが多いです。
さらに実践力を身に着けたプロマネになるためには、さらなる自己研鑽を積み成長していく必要があります。

このような実践力のあるプロマネはどのような企業も欲しがっています。
特に大手企業ほど自社主導でプロジェクトを取り仕切るシーンが多いため、何よりプロマネ人材が必要とされています。
また近年は事業者側が内製でシステム構築するパターンも増えてきているため、そちらからのオファーも少なくありません。

プロマネ人材として実績をあげることができれば、キャリアアップにつなげやすいです。

またプロマネはIT業界の中でも収入が高い分野です。
ネットでプロマネやPMOを対象としたフリーランスの応募を見ていただくと、エンジニアより単価が高いことがわかると思います。

転職を選択肢に入れることができれば、年収UPにつなげやすいとも言えます。
そのためには自己研鑽して実践力を高める必要がありますし、PMPなどの資格取得も重要視されることは意識しておきましょう。

AIに代替されない

AIは急速に普及しており、コーディングすら自動生成できる部分も出てきました。
今後もAIは進化していくので、システム開発の分野でも少なからず影響は出てきます。

多くの業務がAIに代替されていきますが、それでもプロマネがAIに代替されることはないと考えています。
その理由は「AIは責任をとれない」からです。

プロマネの仕事は「意思決定」を行うことです。

どれだけAIが優秀でも、上手くいかなかったときに責任を取ることはできません。
AIの指示で動いた結果、トラブルにつながってしまった場合、クライアントになんといえばよいでしょうか。
「AIが言っていることだから」で納得してもらえるとも思えません。

プロマネは責任を伴う立場ですが、だからこそ責任を取ることのできないAIには無理な役どころとなります。
AIができるのは、プロマネが意思決定するために必要な情報を提供するまでです。

おわりに

プロマネには、マネジメントの基礎知識やスキルが必要です。

人によっては、そのキャラクターから人を使うのが上手かったりチームをコントロールすることに長けた人もいますが、そのような人はほんの一部です。

プロマネの優劣はキャラクターで決まるのではありません。
マネジメントについて自己研鑽することで誰でも実践力を身に着けることができます。

そして実践力のあるプロマネになることができれば、プロジェクト運営も安定しますし、様々なメリットを得られることができるでしょう。

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