なぜ会議は「決められない」のか

「今日の会議、結局何が決まったんだっけ?」
この状態が続くと、プロジェクトは遅れます。しかも遅れ方が厄介で、“じわじわ”と効いてきます。仕様が固まらない、関係者が動けない、手戻りが増える、責任の押し付け合いが起きる。会議の質は、そのままプロジェクト推進力に直結します。

決められない会議の原因は、だいたい次の3つに分解できます。

  • 論点が曖昧:議題はあるが「何を決めたいか」「どこが争点か」が整理されていない
  • 宿題が消える:未決事項が持ち越されるが、誰がいつまでに何をするかが曖昧で放置される
  • 決裁者が揺れる:会議に出ている人に決裁権がない/決裁者がその場で変わる/持ち帰りが常態化する

つまり、会議を直すには「話し合い方」を変えるより先に、会議を“意思決定の装置”として設計し直す必要があります。本記事では、そのための最小セットとして

 1) 論点管理、2) 宿題管理、3) 決裁者固定

の3つの型を解説します。

会議を直す全体像:3つの型で「決まる」状態を作る

会議の改善は、気合やファシリ能力だけで何とかしようとすると失敗します。再現性を持たせるために、まずは会議を次のように定義します。

  • 会議の目的:合意形成ではなく「意思決定」
  • 成果物:決定事項と未決事項
  • 運用の要:論点リスト、宿題リスト、決裁者の明確化

この3点が揃うと、会議は「話して終わり」から「決めて進める」へ変わります。
以降の章で、それぞれをどう作り、どう運用するかを具体化します。

論点管理:議題ではなく「論点」を固定する

論点とは何か(議題との違い)

議題は「話すテーマ」になりがちです。一方で、論点は「決めるための争点」です。
例で見てみます。

  • 議題:新機能Aの仕様
  • 論点:
    • Aの対象ユーザーは誰か(全ユーザーか一部か)
    • 期限優先か品質優先か(どちらを優先するか)
    • 既存仕様との整合(互換性の扱いをどうするか)

会議が迷走するのは、議題だけが置かれていて、論点が整理されていないからです。

論点リストの作り方

会議の前に、最低限この形式で論点を並べます。

  • 論点(問いの形にする)
  • 現状(何が分かっていて、何が不明か)
  • 選択肢(A/B/C)
  • 判断基準(コスト、納期、品質、リスク…)
  • 決裁者(誰が決めるか)
  • 期限(いつまでに決めるか)

ポイントは、論点を「問い」にすることです。
「仕様の確認」ではなく「仕様をA案/B案どちらで決めるか」のように、決定を前提に置きます。

会議中の運用:脱線を止める一言

論点管理が機能するかどうかは、脱線したときの扱いで決まります。
脱線は悪ではありません。ただし、論点から外れた話は、次のどれかに振り分けます。

  • その論点の判断材料として必要 → 続行
  • 別の論点 → 別課題として後で扱う
  • ただの雑談/今決めない話 → いったん切る

使えるフレーズはこれです。

  • 「今の話は、論点◯◯の判断材料で合ってますか?」
  • 「それは別論点なので、論点リストに追加します。今は戻しましょう」
  • 「決めるために必要な情報は何ですか?宿題に落とします」

会議が荒れないコツは、人格ではなく論点に戻すことです。

宿題管理:未決を“見える化”して消さない

宿題が消える典型パターン

決められない会議では、未決事項が積み上がります。しかし次の会議で「何も進んでない」が起きます。理由は単純で、宿題が宿題として管理されていないからです。

  • 誰がやるか不明(“誰か調べて”で終わる)
  • 期限がない(いつかやる → 永遠にやらない)
  • 成果物が曖昧(調べるだけ → 判断に使えない)
  • 次回会議でレビューされない(やらなくてもバレない)

宿題リストの必須項目

宿題はタスク管理ツールでもExcelでも良いですが、最低限この項目を固定します。

  • 宿題内容(成果物ベース)
  • 担当者(1人に固定)
  • 期限(会議日ではなく“提出日”)
  • 次のアクション

成果物ベースが重要です。
「調べる」ではなく「A案/B案の比較表を作る」「リスクと対応案を箇条書きで提出する」のように、会議で使える形にします。

会議で宿題を“回収”する仕組み

宿題管理が根付く会議運用はシンプルです。

  1. 会議冒頭で「前回宿題の回収」
  2. 未回収は理由を聞かずに「期限再設定」か「担当変更」
  3. 回収できた宿題から論点を決める

責めないことも大事ですが、もっと大事なのは未回収が許容される空気を作らないことです。
淡々と、仕組みで回収します。

決裁者固定:決める人を会議に“固定席”で置く

決裁者が不在だと、会議は永遠に終わらない

どれだけ論点と宿題が整っても、決裁者がいない会議は「報告会」になります。
決裁者不在の会議で起きることは、だいたいこの3つです。

  • 「持ち帰ります」
  • 「上に確認します」
  • 「関係者にも聞かないと…」

もちろん確認が必要な場面もあります。ただし、それが常態化しているなら、会議設計が間違っています。

決裁者固定の手順

役割を曖昧にしないために、RACIの考え方が便利です。

  • R:実行担当(やる人)
  • A:最終責任(決める人=決裁者)
  • C:相談先(意見を聞く人)
  • I:共有先(知らせる人)

会議の論点ごとに、最低限「A(決裁者)」を1人に固定します。
「部長と課長のどっちが決める?」が揺れている場合は、会議の場で結論を出そうとせず、会議前に決裁ルートを確定させます。

決裁者が出られない場合の現実的な代替案

現場では「決裁者が忙しくて出られない」があります。そこで、代替案は次の順で検討します。

  1. 決裁者の代理(委任):この範囲は代理決裁OK、を明文化
  2. 事前決裁:論点と選択肢を事前に提示し、会議では確認のみ
  3. 決裁タイムボックス:持ち帰りOKだが「◯日までに決裁」の期限を固定
  4. 会議をやらない:決裁者に1on1で決め、結果を共有する

「会議で決めたい」より「期日までに決める」を優先すると、手段が柔らかくなります。

次の会議から変えるチェックリスト

最後に、明日から使える最小セットをまとめます。

  • 会議招集時に「決める論点」を問いで書く
  • 論点リストに「選択肢」「判断基準」「決裁者」を入れる
  • 宿題は「担当1人」「期限」「成果物」を必須にする
  • 次回会議の冒頭で宿題回収を必ず実施する
  • 決裁者がいない論点は会議に載せない(載せるなら決裁期限を固定)

この5つだけでも、会議の“決まり方”が変わります。

まとめ

決められない会議は、参加者の能力不足ではなく、会議が「決定の仕組み」になっていないことが原因です。改善の要点は3つに集約できます。

  1. 論点管理で、何を決めるかを問いとして固定する。
  2. 宿題管理で、未決を消さずに回収する運用を作る。
  3. 決裁者固定で、誰が決めるかを論点ごとに明確にする。

会議は「うまく話す場所」ではなく、「決めて進める装置」です。論点・宿題・決裁者の型を入れて、短くても前に進む会議に変えていきましょう。