プロジェクトの立ち上げ

ステークホルダー登録簿の作成 – ステークホルダーの抽出、分析と登録簿活用の3つのポイント

概要

プロジェクトの立ち上げ時、プロジェクト憲章と同じくステークホルダー登録簿を作成します。
ステークホルダーとはプロジェクトに関わる全ての利害関係者のことです。
様々なステークホルダーと調整や交渉を行いながらプロジェクトを遂行していくため、どのような人がいて、何を求めているのか把握することが重要になるためです。

念のため補足ですがステークホルダー登録簿は公開せず、個人管理となります。
登録簿に記載しているステークホルダーに見られたら目も当てられないので、取り扱いには注意してください。

ステークホルダー登録簿のフォーマットは、こちらからダウンロードできます。

ステークホルダー登録簿のポイント

プロジェクトへの要求事項を記載する

ステークホルダーが、プロジェクトの要求事項を記載します。
例えば「仕様検討に参加させてほしい」「打ち合わせは必要最小限にしてほしい」といった内容です。

ステークホルダーの特徴を分析する

対象者のプロジェクトに対する関与度、関心度、権力、正当性、緊急性を表現します。
このうち関心度については以下の5段階に分かれます。

  • 不認識:プロジェクトに関わりあることを認識していない
  • 抵抗 :プロジェクトに賛成しておらず抵抗する
  • 中立 :支持、不支持のいずれでもない(あまり興味がない)
  • 支持 :プロジェクトに賛成している
  • 指導 :プロジェクトに賛成しており、積極的に取り組んでいる

下に行くにつれてプロジェクトへの参加が積極的です。
ステークホルダー全員が支持や指導になる必要はありませんが、期待する段階とマッチしていないステークホルダーがいればプロジェクト遂行に影響が出るかもしれません。
その場合は、プロジェクトに積極参加してもらうようにコミュニケーションを取ります。

継続してメンテナンスする

プロジェクト立ち上げ前にステークホルダーの抽出は行いますが、プロジェクトの進行状況や体制変更により変化していきます。
登場人物の増減もあれば、役どころも変わるため、ステークホルダーとの関係性も変わってきます。
そのため、最初に作りっぱなしにするのではなく、定期的にステークホルダー登録簿をメンテナンスします。
作業工程が進むときは体制が変わることも多いため注意します。

ステークホルダーの抽出

プロジェクトに、どのようなステークホルダーが関連しているか洗い出します。
案件受注型のシステム開発を例に例えると、次の観点で調べていきます。

ポイント1:社内のステークホルダー
・開発チーム
・プロジェクト責任者、プロジェクトオーナー
・プロジェクトの審査/承認の関係者
・社内要員の調整先部門

ポイント2:社外のステークホルダー
・クライアント(発注者)
・ユーザ(システム利用者)
・エンドユーザ(クライアントのユーザ)
・クライアント内部の審査/承認者

ポイント3:外部調達
・サプライヤ
・第3者機関

上記のうち、クライアントの上司や承認者が誰なのか明確にします。
開発作業では直接見えない相手かもしれませんが、クライアント内部の決定権を持つ人の考え方を理解することで開発をスムーズに進めることができます。

ステークホルダーの分析

突出モデル

ステークホルダーの重要度は「権力、正当性、緊急性」をもって判断します。

  • プロジェクトに対する大きな権限を持つ(権限)
  • プロジェクトにおける正式な役割があり、参加が求められている(正当性)
  • その人が発言したことは、すぐに対応しなければいけない(緊急性)

この3つが高い人は、プロジェクトにおける重要人物となります。

全てのステークホルダーの言動を受け止めるのは難しいので、この重要度を見ながら調整の順番や情報の取捨選択します。

権力と関心度のグリッド

ステークホルダーの権力と関心度の高低により4つの分類に分けることができます。

権力:高  関心度:高 ・・・ 注意深くマネジメントする
権力も関心度も高いため、このステークホルダーはプロジェクトの中心人物です。
よりコミュニケーションを取る必要があります。

権力:低  関心度:高 ・・・ 常に情報を与える
権力はありませんがプロジェクトに強い関心があります。
何か決定するわけではなくてもプロジェクトに関与できないと不満になるため、情報共有は欠かせません。

権力:高  関心度:低 ・・・ 満足な状態を保つ
権限はありますが、プロジェクトへの関心はありません。
このステークホルダーはトラブルや揉め事を避けたがる傾向にあるので、その点に注意してコミュニケーションを取ります。

権力:低  関心度:低 ・・・ 監視する
特に改まってマネジメントする必要はないですが、関心度が急に増えるかもしれません。
また権限はなくても有益な情報を持っているかもしれないのでチェックは継続します。

権力と関心度のグリッドについては、別記事「ステークホルダーエンゲージメント計画」でも解説しています。