【目次】
・はじめに
・課題管理の目的
- プロジェクトの問題を把握する
- 課題を共有する
- 課題管理とWBSの違い
・課題管理の運用ポイント
- ①課題の大小問わず「記入」する
- ②課題管理の運用はシンプルにする
- ③課題の担当、期限を明記する
- ④「課題記入者=担当」にしない
- ⑤課題管理表は1つに統一する
- ⑥課題を分割・統合する
- ⑦優先度の設定
- ⑧課題の完了条件を決める
- ⑨課題管理表の棚卸ルール
はじめに
システム開発では日常的に課題が発生します。
発生する課題は、あらかじめ想定されるものから突発的に発生するものまで様々なので、プロジェクトでは課題管理を行います。
一般的に課題管理表を使用することが多いですが、アジャイルなどカンバンボードを使用こともあります。
どのプロジェクトでも課題管理を行いますが、適切に運用しないと活用されず形骸化することもあります。
プロジェクトメンバーが1,2人くらいの小規模プロジェクトであればよいですが、それなりの規模で課題管理が運用されていないプロジェクトではトラブルが多発するでしょう。
今回は、課題管理が適切に活用されるための運用方法について解説します。
課題管理の目的
プロジェクトの問題を把握する
課題とは、プロジェクトを遂行するために検討・対策すべき事項であり、問題を解消するための取組みです。
一般的に課題はタスク化できるほど作業内容が具体化されていないため、WBSに含めることは難しいです。
しかし課題を漏れなく対応するためにも、課題の対応状況を正しく把握できる仕組みが必要です。
課題管理表がなければ、どのような課題があり、誰が、いつまでに対応するのかわからなくなります。
課題の検討状況や対応期限なども、状況把握するために必要な情報です。
課題を共有する
課題は複数人で検討、調整することが多いです。
また課題の検討結果が複数メンバの作業に影響することもあります。
そのため、どのような課題があるのか、その進み具合はどうか、などプロジェクトのメンバに共有することは大切です。
課題管理表を進捗会などの場で棚卸する機会があると思いますが、これは課題の対応状況を更新するだけでなく、チーム内で課題の状況を共有することも目的になっています。
課題管理表はチーム内の情報共有ツールでもあるため、メンバは誰でもアクセスできる仕組みとします。
逆に、情報漏洩や不適切な情報展開を防ぐために、関係者以外が閲覧できない仕組みも必要となります。
課題管理とWBSの違い
課題管理では、検討事項を課題管理表に記載して担当者と期限設定、ステータスを管理します。
これはWBSでタスク管理しているのと同じように思えますが、次の点で課題管理とWBSは異なります。
どちらで管理すべきか迷う場合、プロジェクトの定例作業などを除き、WBSに含まれない作業は課題管理表に入れても良いです。
課題管理の運用ポイント
ここでは課題管理を形骸化させず、有効に運用するためのポイントを記載します。
チームとして活用促進するための工夫です。
①課題の内容問わず「まず記入」
課題管理で重要なのは、全員が運用を習慣化することです。
その取り組みの第一歩として、課題を記入する習慣を身に着けるところから始めます。
そのためには、記入する敷居を下げるためにも「記入を迷ったら書く」というルールを設けます。
クライアントと共有する課題管理といった取り扱い注意の課題管理は別ですが、チーム内で活用する課題管理なら「これは課題管理に入れた方がよいのか?」と迷うなら「まず記入する」とすることが望ましいです。
その内容が、担当者としては小さなことに思えても、人によって重要度が変わることがあります。
そのような事項が顕在化しないことが一番の問題です。
課題管理を利用する敷居を下げる対策を考え、メンバに記入を促す取り組みを行います。
②課題管理の運用はシンプルにする
上記①でも伝えましたが、メンバが課題管理を積極的に活用できることが大切です。
そのためにも課題管理の運用はシンプルにすべきです。
リーダーやマネージャは、管理資料に情報が多いほど管理しやすいので課題管理に様々な情報を入れたくなります。
しかし管理表に入力する情報が多いと、記入する人は面倒なので入力しなくなります。
気軽に課題管理を更新してもらえるように、管理情報は必要最小限にします。
別記事「課題管理のExcelフォーマット」でサンプルを提供しているので、どのような項目が必要なのか参考にしてください。
③課題の担当、期限を明記する
課題管理では担当者と期限を明記することが大切です。
担当者と期限が空欄ということは、WBSでいうスケジュールと担当者が空欄になっている状態と同じなので、課題が進まないのは当然です。
もし課題を記入したメンバが担当者と期限を入力できない場合、課題管理の棚卸で内容精査しながら記入すると良いでしょう。
ここで1つ注意点です。
課題に関連する関係者が複数人いたとしても、担当者の記名は必ず1名だけ設定し、その担当者が課題に責任を持って推進します。
もし複数名を入れると責任の所在が分散してしまい、ポテンヒットになるためです。
④「課題記入者=担当」にしない
課題を提示した人が、そのまま担当者となる話を聞きます。
それでは、誰も課題を記入しなくなって当然です。
リーダーなど担当をアサインする人は、誰が課題対応に適任なのか検討し、メンバのスケジュールも考慮のうえ設定します。
当然、課題対応することでメンバの作業に影響が出るようであれば、WBSの期間や担当割振りを見直します。
課題対応は工数の発生する作業であることを忘れてはいけません。
このような課題対応が発生しても調整できるスケジュール設定が必要です。
逆にバッファが皆無のスケジュールにすると課題対応する工数がありません。
課題もWBSと同様に必要な作業なので、見込みでも課題を対応する工数をスケジュールに組み込みます。
⑤課題管理表は1つに統一する
クライアントや委託先など外部組織と課題を共有する場合、ファイル共有できる環境がない場合があります。
しかし、例えば課題管理表をExcelで個別管理した場合、更新するごとにマージ作業が発生するためマージミス、リアルタイムに最新状況を把握できないなどの弊害が出ます。
課題管理表は個別管理せず1つに統一します。
上記の場合、redmineで課題管理したり、クラウドストレージ、課題管理ツールなど活用することを検討します。
ちなみにGoogleのスプレットシートを使用することも考えられますが、無料版では2段階認証やSSOなどのセキュリティ機能がありません。
アカウント乗っ取りのインシデントを回避するため、プロジェクトの課題管理として使用するなら有料版を前提として検討しましょう。
⑥課題を分割・統合する
課題検討が進むと、検討事項が増えて複数に分かれることがあります。
そのような場合は、課題検討をシンプルにするため、課題を分割すると良いです。
検討した結果、他の課題の進み方に同調することもあるので、その時は課題を統合します。
課題を分割・統合することで、常に管理しやすい状態を保ちます。
⑦優先度の設定
一度に全ての課題を対応することは出来ないので、それぞれ優先度をつけて順番に進めます。
この優先度ですが状況により変化するため最初に設定したままではなく、課題棚卸などのタイミングで見直します。
対応期限が近づくことで優先度が上がったり、プロジェクト状況の変化により優先度が下がる場合もあります。
⑧課題の完了条件を決める
課題対応は明確なゴールがないことが少なくありません。
不明瞭な状態から検討を進めて形作っていく場合、議論が発散したり、迷走することがあります。
そのような状況を回避するため、どのような状態になったら課題が完了するのか条件を明確にします。
⑨課題管理表の棚卸ルール
課題管理表を定期的に棚卸をすることで、検討状況の最新化、進め方の見直しを行います。
棚卸には、次の目的があります。
- 課題の対応状況を共有する
- 完了した課題を承認してクローズする
- 期限、優先度の見直し
- 課題対応の指示
- 課題内容の見直し
定期的に棚卸をしていれば、それほど時間はかかりません。
逆に時間を空けてしまうと、課題内容を思い出すところから始めるため時間がかかります。
棚卸は週次ペースくらいで定期的に確認すると良いでしょう。