【目次】
・最初の1年で意識したいこと
・スキル1:ゴールとスコープをわかりやすく言語化する力
・スキル2:信頼関係をつくるコミュニケーション力
・スキル3:タスク分解とスケジュール設計の基本
・スキル4:進捗を早く正しくつかむモニタリング力
・スキル5:リスク・課題を見える化して潰す力
・スキル6:ステークホルダーを動かす報告・資料作成力
・スキル7:振り返りと学びを仕組みにする力
・まとめ
最初の1年で意識したいこと
PMとして最初の1年は、「何をどこまでできればOKなのか」が見えにくく、不安とプレッシャーを感じやすい時期です。
一方で、多くの人が「全部を完璧にやろう」として疲れてしまいます。
最初の1年で大事なのは、すべてを完璧にこなすことではなく、土台となるスキルをしっかり固めることです。
この土台ができていれば、2年目以降で仕事の幅を広げても、崩れにくいPMとして成長できます。
この記事では、最初の1年で身につけたいスキルを、次の7つに整理して解説します。
- ゴールとスコープをわかりやすく言語化する力
- 信頼関係をつくるコミュニケーション力
- タスク分解とスケジュール設計の基本
- 進捗を早く正しくつかむモニタリング力
- リスク・課題を見える化して潰す力
- ステークホルダーを動かす報告・資料作成力
- 振り返りと学びを仕組みにする力
どれも高度なテクニックではなく、「明日から行動を少し変えれば実践できるもの」を中心に紹介します。
スキル1:ゴールとスコープをわかりやすく言語化する力
最初の1年でいちばん差がつきやすいのが、「結局このプロジェクトは何をやるのか」を説明できるかどうかです。
なぜ重要か
- メンバーが「何を・どこまで」やればいいか分からないと、手戻りが増える
- 顧客や上司との認識ズレが、トラブルの火種になる
- 自分自身も、優先順位を決めにくくなる
最初の1年でできるレベルの目標
以下の3つを、自分の言葉で説明できるようになることを目指します。
- このプロジェクトの目的(なぜやるのか)
- 達成したい成果物(何ができていれば成功か)
- 範囲に含めること/含めないこと(やること・やらないこと)
具体的な実践例
- 要件定義書や企画書を読んだあと、A4 1枚で「目的・成果物・スコープ」を自分なりにまとめてみる
- 打ち合わせ後に、「今日決めたスコープ」を3行くらいでチャットに書き起こす
- 「これは今回の範囲外ですよね?」と、あえて確認質問をして境界線を明確にする
最初から完璧な定義を作る必要はありません。「自分の言葉で説明してみる」回数を増やすことで、少しずつ精度が上がっていきます。
スキル2:信頼関係をつくるコミュニケーション力
PMは、自分ひとりでは何も進められません。
メンバー、顧客、上司、協力会社など、多くの人と関わりながらプロジェクトを動かす役割です。
最初の1年で目指す状態
- メンバーが「困ったら PM に相談しよう」と思ってくれる
- 顧客・上司が「状況はきちんと共有されている」と安心できる
- PM自身も、1人で抱え込まずにすむ
やるべき基本行動
- こまめなコンタクト
- 週1回は、主要メンバーと「雑談も含めた軽い状況確認」をする
- チャットでの報告には、できるだけその日のうちにリアクションを返す
- ネガティブな話題ほど早く共有する
- 「これは少し怪しいかも」と思ったタイミングで、上司や顧客に方向性だけでも相談する
- 事後報告にならないよう、「予兆」の段階で声を上げる習慣をつける
- 相手の立場に立った一言を添える
- 「急なお願いで恐縮ですが」「お忙しいところすみませんが」など、相手の状況への配慮を忘れない
- メンバーには「無理はしないでくださいね」「助かりました、ありがとうございます」と感謝を言葉にする
特別な話し方よりも、頻度・タイミング・配慮の一言が、信頼関係づくりの基本になります。
スキル3:タスク分解とスケジュール設計の基本
PMの基本動作の一つが、「やることを分解して、順番と担当を決める」ことです。
なぜタスク分解が重要か
- 「誰が何をやるのか」がはっきりしないと、抜け漏れや押し付け合いが起きる
- 大きな仕事ほど、そのままでは見積もりができない
- メンバーに仕事を振るとき、「これをお願いします」と具体的に伝えられる
最初の1年で身につけたいステップ
- 大きな塊を書き出す
「要件定義」「設計」「開発」「テスト」「リリース」など、大きな工程単位で棚卸しする。 - 各工程を「やる作業」に分ける
例:要件定義なら- ヒアリング準備
- ヒアリング実施
- 要件整理メモ作成
- 要件定義書ドラフト作成
- レビュー・修正
- タスクごとに「担当・期間・成果物」を決める
- 誰が
- いつまでに
- 何ができていれば完了か
エクセルや簡易ツールから始めてOK
最初から高度なツールを使いこなす必要はありません。
エクセルやスプレッドシートで、以下の列を持つ一覧を作るだけでも十分効果があります。
- タスク名
- 担当者
- 開始日/終了日
- 状況(未着手/進行中/完了)
「タスクを分解して、一覧にして、担当と期限を決める」
この一連の流れを、どんな小さな案件でも繰り返すことで、スケジュール設計の感覚が養われます。
スキル4:進捗を早く正しくつかむモニタリング力
計画を立てたあとに必要なのが、「今どこまで進んでいるか」を素早く把握する力です。
よくあるつまずき
- 「大丈夫です」と言われたのを信じたら、実は遅れていた
- 定例会議はやっているが、本当の状況が見えない
- 問題が発覚するのがいつもギリギリ
最初の1年で意識したいポイント
- 数字と成果物で確認する
- 「何%進みましたか?」だけでなく、「どの成果物がどこまでできましたか?」と聞く
- 完了条件を具体的にして、主観だけに頼らない
- 「想定からのズレ」に注目する
- 「予定より2日遅れています」など、計画との差分を意識してもらう
- ズレが小さいうちに、フォローや優先順位の調整を行う
- 定例だけに頼らない
- 短いチャットや1on1で、こまめに状況を聞いていく
- 「何か不安に思っていることはありますか?」と一言添える
シンプルな進捗管理表のイメージ
- タスク名
- 担当
- 予定開始/予定終了
- 実績開始/実績終了
- 状況(◎順調/△やや遅れ/×要対応)
- コメント
最初はざっくりでも構いません。「数字」「成果物」「コメント」の3点で、状況を確認する習慣をつけることが大切です。
スケジュール表のサンプルはこちらからダウンロードできます。
スキル5:リスク・課題を見える化して潰す力
プロジェクトでは、「まだ起きていない心配ごと(リスク)」と「すでに起きている問題(課題)」が常に存在します。
これを頭の中だけで管理しようとすると、見落としや後手対応が増えてしまいます。
最初の1年で目指す状態
- 気になることは、まずリストに書き出す
- 優先度と担当を決めて、対応を進める
- 定例の中で状況を継続的に確認する
シンプルなリスク・課題一覧
最低限、次の項目を持つ一覧を作ると、かなり管理しやすくなります。
- ID
- 内容(何が不安/何が問題か)
- 種別(リスク or 課題)
- 影響度(大・中・小)
- 発生確率(高・中・低)※リスクの場合
- 対応方針(回避/軽減/受容 など)
- 担当者
- 期限
- 状況(未対応/対応中/完了)
リスク管理表、課題管理表のサンプルは、それぞれこちらからダウンロードできます。
実践のポイント
- 会議中に出た懸念点は、その場で一覧に追記する
- 定例会議では、「リスク・課題一覧」を必ず一度はスクリーンに出す
- 重要なものは、「誰が・いつまでに・何をするか」を必ず決めて終わる
「気になることは全部リストに入れる」という習慣がつくと、PMとしての視野がぐっと広がります。
スキル6:ステークホルダーを動かす報告・資料作成力
PMは、メンバーだけでなく、顧客・上司・他部署などのステークホルダーを動かす役割も担います。
そこで効いてくるのが「報告の仕方」と「資料のわかりやすさ」です。
最初の1年で押さえたい基本
- 「結論→理由→詳細」の順で話す
- 例:
- 結論:リリース日は予定通りで問題ありません
- 理由:テストの進捗が計画通りで、重大な不具合は出ていないため
- 詳細:テスト実施率・不具合件数などの数値
- 例:
- スライドや資料は「1枚1メッセージ」
- 1枚のスライドに詰め込みすぎない
- 「この1枚で何を伝えたいか?」を一言で言えるようにする
- 相手の知りたいことに合わせる
- 顧客:品質・期日・コストへの影響
- 上司:リスク・意思決定が必要なポイント
- メンバー:自分たちの作業への影響
具体的な練習方法
- 定例の議事録や報告メールを書いたら、「結論は一番上に来ているか?」をチェックする
- 上司に報告する前に、「この1分で何を理解してもらいたいか」をメモに書く
- 既存の資料(社内の上手な人の資料)を真似して構成をトレースしてみる
完璧なデザインよりも、短時間で状況と判断ポイントが伝わることを重視しましょう。
スキル7:振り返りと学びを仕組みにする力
最初の1年は、失敗や戸惑いが多いのが当たり前です。
大事なのは、失敗の数そのものではなく、「そこから何を学んだか」です。
振り返りを習慣にするメリット
- 同じ失敗を繰り返しにくくなる
- 自分なりの「PMとしての型」が少しずつできてくる
- 2年目以降の成長スピードが大きく変わる
実践しやすい振り返りのやり方
- 週1回、10〜15分の自己振り返り
- よかったこと(続けたいこと)
- うまくいかなかったこと(やめたいこと・変えたいこと)
- 来週から試したいこと
- プロジェクトの節目で簡単なふりかえりをする
- 「今回、何がよくて、何が課題だったか」をKPTなどで整理する
- 学びを簡単なメモや社内Wikiに残しておく
- 信頼できる人に「一言フィードバック」をもらう
- 「最近の進め方で、気になるところありますか?」と聞いてみる
- 指摘された点を、次の週の行動目標にする
「振り返る時間を、あらかじめ予定に入れておく」ことが習慣化のコツです。
まとめ
PMとして最初の1年で、すべてのことを完璧にこなす必要はありません。
大切なのは、次の7つのスキルを「意識して」「小さく試し」「少しずつ改善する」ことです。
- ゴールとスコープをわかりやすく言語化する力
- 信頼関係をつくるコミュニケーション力
- タスク分解とスケジュール設計の基本
- 進捗を早く正しくつかむモニタリング力
- リスク・課題を見える化して潰す力
- ステークホルダーを動かす報告・資料作成力
- 振り返りと学びを仕組みにする力
どのスキルも、今日から少しだけ行動を変えることで、現場で実践していける内容です。
まずは「自分が一番弱いと思うスキル」を1つ選び、次の1〜2週間で具体的に試す行動を決めてみてください。
「完璧なPM」ではなく、「昨日より一歩前に進んだPM」を積み重ねていくことが、最初の1年でもっとも大切な成長のイメージです。

